アポロの遺物が月の秘密を明らかにする


6月20付けSCIENCE@NASAに「アポロの遺物が月の秘密を明らかにする」という記事が掲載されています。
内用は月面掘削に関するもの。私が一番興味がある分野で、これは!と思ったのですが、要するにサーベイヤーのスコップの寸法の資料が失われてしまったので再計測してレプリカを作って実験してますよという話。この手のアポロデータが無くなったという話、時々聞きます。40年以上も前の事ですのでしょうがないのでしょう。「アポロの遺物が秘密を明らかにする」という題から、何かすごいことが起きたのか!と思いましたがそうでは無いようです。
でも、この記事で注目すべきは最後に書かれている「私達のチームは実際月面で計測されたサーベイヤー7号のデータにかなり近い計測値が得られてとても満足しています。」という一文。
本文にも書かれているようにレゴリスと言われる月の砂、地球上の砂とはかなり様子が違います。例えば月面を掘ったときどのくらいの力が必要なのかという問題に対して、いままで地球の砂に対して作られていた(半経験的な)理論式を使って本当に良いのかどうか?それを検証するためには地球上で模擬月の砂を使った実験をする必要があります。そしてその実験結果の解釈(異なる重力、高真空の影響などをどのように考慮するか)が正しいかどうかは、やはり月面で実際に計測した値(この場合はサーベイヤー7号の記録)と照らし合わせる必要があるのです。ですので「サーベイヤー7号のデータにかなり近い計測値が得られ」たことは「とても満足」する事柄なのです。この一文に、月面上の砂の機械的性質に関連する問題、いわゆる「ルナメカニクス」に関する取り組み方が端的に現れていると言えるでしょう。
概訳は以下。


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想像してみよう。月に着陸し宇宙船から降りる。そして荒々しい月面を見渡すとそこには200年前からそこに立っている古い宇宙船が見える。。。。
これと同じことが実際1969年に起きた。宇宙飛行士、ピート.コンラッドとアラン.ビーンがアポロ12号の着陸船から降りたときのことだ。そこから歩ける範囲のクレータの淵に1967年に月面に着陸していたアメリカの月探査機サーベイヤー3号が立っていたのだ。

サーベイヤー3号とアポロ12号

アポロ12号の着陸地点はサーベイヤー3号の着陸点付近に慎重に決められた。サーベイヤー3号は2年半の間、高真空、宇宙放射線の被曝、隕石の衝突、極端な昼夜の温度差といった月の過酷な環境の中で過ごしてきた。地球ではNASAのエンジニア達が、金属、ガラス、そして宇宙船を作っている他の物質がそのような月面の過酷な環境によってどの様な影響を受けるか知りたがっていた。サーベイヤー3号を直接調べるのがその答えを得るのに最も良い方法だと思われたのだ。
4回目の4時間にわたる船外活動において、ビーンとコンラッドはサーベイヤー3号まで歩き、大量の写真撮影と計測を行い金属部品と電気ケーブル、カメラを、そして最後に、乾いた月面を掘削し月の砂の機械的性質を計るためにサーベイヤー3号の伸縮アーム先端に取り付けられていたスコップを回収した。
これら小さなスコップ、カメラ、そして他の部品は地球で分析され、その後厳重に保管された。スコップは40年の間ジョンソンスペースセンターで保管され、その後カンザスの宇宙博物館に移された。そこで静かに時を過ごすことになっていたが、最近、NASAのグレンリサーチセンターの研究者たちがその小さなスコップが大きな秘密を解く鍵を持っていることに気づいたのだ。
その秘密とは、月面を掘るということに関係する。
NASAはは月に人を戻し月面基地を構築するという計画を進めているが、この計画を進めるためには「掘削」がどうしても必要になる。月面の岩、ダストそして「レゴリス」といわれる砂には人が生きていくために必要な資源を含んでいる。例えば月の岩石には酸素が大量に含まれ、月の極地域では、クレータの永久影部分の砂の中に凍った水が存在しているといわれている。

レゴリス粒子

だがどうすればよいのだろう?月のレゴリスは地球の砂とは違っている。地球では、砂は有機物と鉱物でできているのが一般的だ。地球の砂は常に湿気を含み、水の作用で滑らかな粒子表面を持っている。月のレゴリスは、その逆で、湿気は全く無く、長年の隕石の衝突によって細かく砕かれたガラス質状の物質である。それをシャベルやスコップで掘ろうとしたとき、地球の砂とは全く違った反応を示すのだ。
「月面を掘る機具を設計するためには、月のレゴリスの中でスコップや他の装置を動かす際に発生する反力を事前に算定しなければいけません。」とグレンリサーチセンターのISRU(In-Situ Resource Utilization:月資源利用)レゴリス分析チームのリーダAllen Wilkinson氏は言う。
サーベイヤー3号とその後のサーベイヤー7号は実際に月面を掘りスコップを月の砂の上で動かし、押し付け、引っ掻くのにどのくらいの力が必要なのか測定している。しかしWilkinson氏のグループが40年以上前に得られたそれらのデータを分析するためには、サーベイヤーのスコップの形状データが必要だった。だが不幸なことにスコップの設計データは既に失われていた。スコップそれ自身に答えを聞くしかなかったのだ。
2007年7月、Wilkinson氏はカンザスに赴き、スコップの形状を細かく計るためにカンザス州率宇宙博物館からそれを借りてきた。

調査チーム

しかし、そのスコップの計測は簡単ではなかった。スコップに定規を当てて値を読み取ることができなかったのだ。実はスコップに触ることさえ許されていなかった。サーベイヤー3のスコップは密閉された三角のコンテナに入れられており、NASAはそれを大気の中に取り出すことはその歴史的価値を半減させるとして許さなかったのだ。
そのためレゴリス調査チームはケネディ宇宙センターから写真計測装置を借り、写真測量技術を用いて計測した。彼らは撮影用スタジオをつくり、彼らのメンバーの掘削実験のエキスパートであるJuan Agui氏が、正確に市松模様の基準寸法が書かれたキューブと共にコンテナに入ったスコップを撮影した。そしてソフトウエアを用い、ケネディ宇宙センターのRobert Mueller氏が三角測量法を使って、基準のチューブとスコップの角のポイントを照らし合わせることで寸法を抽出した。このソフトウエアはコロンビア事故の調査のために開発されたものだった。

サーベイヤーのスコップ

「写真測量はとてもうまくいきました。」Agui氏はいう。「私達はスコップを0.03~0.04インチ(約1mm)の精度で計測することができました。」
「掘削反力は今計測中です。」と彼は言う。スコップの複製が月のレゴリスの特性と最も近いレゴリスシミュラントJSC-1aで満たされた長方形の「砂地盤」へ突き立てられ、その時の反力を計測している。「私達のチームは実際月面で計測されたサーベイヤー7号のデータにかなり近い計測値が得られてとても満足しています。」
このテスト装置を用いて、彼のチームは例えばスコップの別の形状を検討したり月の砂の力学理論を再検討したりすることも考えている。
月面掘削の秘密は解き明かされつつあるようだ。
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写真①:アポロ12号の宇宙飛行士、ピート.コンラッドがサーベイヤー3号を調べている様子。コンラッドの着陸船「イントレピッド」は約200ヤード後ろに写っている:Photo NASA
写真②:月のレゴリスの拡大写真。火山性ガラス粒子、鋭い角を持つ「インパクトガラス」と鉱物などの混合物(さらに拡大して解説付きの写真はこちら):Photo courtesy of Larry Taylor, University of Tennessee.
写真③:レゴリス調査チームの4人に調査されるサーベイヤー3のスコップ。左から右へ、Xiangwu (David) Zeng氏, Enrique Rame氏, Allen Wilkinson氏, Juan Agui氏:Copyright 2007 Trudy E. Bell.
写真④:ガラスのコンテナに入れられたサーベイヤー3号のスコップ。前に置かれた万年筆は寸法を示すため。スコップの内側を写した別の写真はこちら:Copyright 2007 Trudy E. Bell

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1 Response

  1. SolidFromPhoto より:

    はじめまして。
    写真から3次元形状を作成し測量などを行うプログラムを作っています。よろしければご覧ください。

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