バチバチ惑星~月や火星表面での静電気問題


2005年8月11日付けSIENCE@NASAに月面や火星表面での静電気問題が掲載されていました。月より火星での静電気問題がメインの記事ですが、月面での静電気の情報はあまりないので、訳してみました。月面居住区を作る際に、静電気を防ぐために、まず地面の中に伝導体の薄膜を敷いてその上に居住区を建てるなどの案が考えられているようです。また、火星ローバソジャーナには静電気を大気中に放出する「逆避雷針」がついているとは知りませんでした。詳しくは以下を。


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乾燥した冬の日、ウールの絨毯を底か皮の靴で歩いた後、ドアノブを触ったことがあるだろうか?バチッ!そのときあなたの指と金属のドアノブの間にスパークが走っている。

ドアノブにはご用心(画像:NASA)

これが、小さく光る静電気である。
誰もが静電気には、主に冬にそしてまれに湿度が低い日に悩まされたことがあるだろう。しかし月や火星を歩く宇宙飛行士にとっては、静電気は実際のトラブルを起こしかねない問題である。
「火星は、砂は非常に乾燥した絶縁体なので宇宙飛行士が外に出て居住区に戻りエアロックをあけようとした時、小さな稲妻が発生し電子機器を一瞬で壊すかもしれないと考えています。」とオハイオ州のクリーブランド、NASAのグレンリサーチセンターの太陽電池および宇宙居住部門の物理学者 Geoffrey A. Landis氏はいう。
この現象はターボエレクトリックチャージングといわれている。
ターボ(Try-boと発音する)とは“擦る”という意味である。違う物質同士を、例えばウールと硬い皮の靴底などを、互いに擦り付けると、片方の物質がいくらかの電子を他の物質に与える。この電子の分布か強い電解を形成する。
地球では、私たちの周りにある大気と着ている服が適度に湿っており適度な電気伝導を持つため、歩いたり擦れたりすることで発生する静電気は地面の方に流れていく。電子は体に溜まるのではなく地面に流れていくのだ。
しかし大気と身に着けている物質がとても乾燥していたら、例えば冬の日などでは、それらは立派な絶縁体となり、地面に流れる道がなくなる。あなたの体はマイナスに帯電していき、おそらく2万ボルト程度になる。それでもし伝導体に、例えばドアノブなどの金属に触れたら、バチッ!体に溜まっていた電子が一気に放出される。
月や火星は、ダーボエレクトリックチャージングが発生するには理想的な環境である。砂は地球の砂漠より乾燥し、理想的な電気絶縁体になっている。さらに、砂と宇宙服や宇宙船に使われている物質の多く(例えばアルミニウム、ネオプレンにコーティングされたナイロン、ダクロン、ウレタンコーティングのナイロン、トリコット、ステンレスなど)はお互いに大きく異なる物質である。宇宙飛行士が歩いたりローバが動き回ったりすると、彼らのブーツやローバのホイールは砂利や砂塵と擦れ合うことで発生する静電気を集めていく。砂は絶縁体で、地面には電気が流れないため、宇宙服やローバには大量のターボエレクトリックチャージングが発生する。その強さはまだよくわかっていない。そして宇宙飛行士やローバが基地に戻ってきて金属に触れたとき、バチッ!基地のライトは消えるか、壊れるかもしれない。
NASAのグレンリサーチセンターのLandis氏らは、マーズパスファインダーが火星に着陸する前の1990年後半からこの問題を研究している。「火星大気と火星の砂を模擬した環境の中で火星ローバのプロトタイプを走行させたとき、それが数百ボルトに帯電していることに気がついたのです。」

ソジャーナのアンテナ基部の静電気放出点(画像:NASA)

この発見はパスファインダーのローバを設計していた科学者たちにも伝えられ、彼らは長さ1/2インチ(12.7mm)、先端を尖らせた超薄型(直径 0.0001インチ)のタングステンワイヤーをアンテナの基部に付け足した。その針はローバの活動によって溜まった電気を、フロリダのケネディ宇宙センターの静電気および表面物理研究室のCarlos Calle氏の説明によると「ミニチュアの逆避雷針」のように火星大気に放出した。同じような防御用針はスピリットとオポチュニティにも取り付けられている。
月では、「アポロ宇宙飛行士たちは静電気によるスパークを報告していません」とCalle氏は言う。「しかし、将来の月ミッションで多くの乾いた砂とダストを扱うような巨大な掘削装置では電場が発生するでしょう。なぜなら月には大気がなく、電場は極めて強力なものに成長出来るからです。最終的には真空中への電気放出が発生します」
「火星では」彼は続けた。「数百ボルトで電気放出が発生するでしょう。それは稲妻ではなくコロナ放電のような形になるでしょう。したがってそれは宇宙飛行士の生命を危険にするようなものではありませんが、電子機器には重大な影響を与える可能性があります。」
そうすると、この問題に対する解決策は何かあるのだろうか?
地球では、それは簡単である。私たちは電気的に接地を取ることで解決できる。接地とは文字どうり私たちを地球とつなげる–銅製の棒を地中深くに突き刺すことである。この接地棒は地球では大体数フィートまでで充分である。なぜなら砂はその深さでは湿っており、良い伝導体になっているからである。地球それ自体は「電子の海」のようで、接続されたもの全てを無効にできる、とCalle氏は説明する。
月や火星の砂には水分が全くない。火星には氷が広がっていると信じられているが、「凍った水はほとんど電気伝導性を示さない」とLandis氏は言う。したがって接地棒は月や火星のコロニーでは「共通接地」として役立たないのである。

ソジャーナのホイールに火星のダストが付着していることに注意。これは静電気が発生している証拠。(画像:NASA)

火星では、最も良い接地方法は、逆に大気かもしれない。「煙感知器に使われているような」弱い放射線源が宇宙服や住居に取り付けられるかもしれない、と Landis氏は言う。低エネルギのα粒子が薄い大気に飛び出し、分子に衝突しそれをイオン化(電子を放出)させる。したがって居住施設や宇宙服の周りの大気が電気伝導体になり、過剰な静電気を中和する。
月で有効な設置方法を見つけるのは容易ではない。月には放電を行えるような薄い大気もない。変わりに、たぶんアルミ(電気伝導度が高く月の砂から抽出可能な物質が良い)製のワイヤーメッシュまたはフォイルで出来た巨大なシートを、作業地域全体の地面に埋めることで接地が出来るようになるかもしれない。そして全ての居住施設や器具はそのアルミニウムに接地される。
研究はまだ始まったばかりである。接地に詳しい物理学者の間でも意見はまだ一致していない。
写真上:ドアノブにはご用心(画像:NASA)
写真中:ソジャーナのアンテナ基部の静電気放出点(画像:NASA)
写真下:ソジャーナのホイールに火星のダストが付着していることに注意。これは静電気が発生している証拠。(画像:NASA)
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アポロの宇宙服の材質については「APOLLO MAIACS」を煙感知器についてはこのページを参考にさせていただきました。

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