月のダストの跳躍


2013年3月15日付けNASAのニューストピックス太陽系版に「月ダストの跳躍」という記事が掲載されています。ターミネータと言われる月面の昼夜境界線上で発生していると考えられている月の砂粒子が舞い上がる現象について詳しく書かれています。以下概訳です。


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カウベスクレータ

電気的にチャージされたクレータの影の境目付近の月の砂が、月面から浮き上がって影の部分を飛び越え、反対側の太陽光に照らされた地域との間を行ったり来たりしていることが、NASAの科学者の計算によって示された。
この研究は、NASA月科学研究所とエイムス研究センターの月研究グループ(NLSI)の協力の下、ゴダード宇宙飛行センターの月面環境動的応答解析チーム(DREAM)のMichael Collier氏によって行われた。
「ダスト粒子の振る舞いは振り子やブランコの様なものです。」とCollier氏は言う。「私たちは、月面の部分的に影のある地域や小惑星のような太陽系の空気の無い天体において、ダストは蜂の巣周囲の蜂の群れの様にふるまうと考えているのです。私たちはこれはダストの動きの新しい形態であると考えています。この形態の動きではダストは他の天体や他の地域まで飛び出して行くことは無くその地域にとどまり、1から10mの影の部分において行ったり来たりを繰り返すのです。その他の動き方も可能でしょうが、私たちはこの新しい第三の形態の動きが可能であることを示すことができます。」Collier氏は2012年10月のAdvances in Space Research誌に発表した本論文の筆頭執筆者である。
解析チームによると、この効果は月面の夕暮れ時および夜明け時に、月面の山やクレータのリムのように影が連続する部分で一部だけ太陽光に照らされている部分で顕著に発生するとのこと。
「月面のダストは月面の電場の異常を示す指標なのです。」とこの論文の共著者でNASAのゴダードでNISIおよび DREAMチームのリーダであるWilliam Farrell氏は言う。「これらの影の地域では、月の表面は突き出た地域にから見るとマイナスに帯電します。これにより、影の部分に双極場と言われる部分的に複雑で強力なプラスとマイナスに帯電した電場が形成されます。ダストはこの双極場により行ったり来たりする運動形態を取るのです。ターミネータと言われる月面の夜と昼の境目のライン上で発生しているこのようなダストの動きは、おそらく小惑星の表面でも同じように発生していると考えられます。このような動きは、大気が無い宇宙空間の岩石状物体では普遍的なものなのかもしれません。」
月のダストが実際に月面でこのような動きをしているという証拠が実は存在する。「サーベイヤーで撮影された画像にこのようなダストの動きのヒントがあります。サーベイヤ着陸地点で黄昏時と夜明け時に夕焼けや朝焼けのような現象が観測されているのです。密度の高い大気が無い月面上で、太陽が地平線に沈む際に太陽光の散乱を原因とするこのような現象が起こることは最初は大きな驚きでした。このモデルは、月のターミネータと言われる夕暮れ/夜明けの境界での多数の影の地域において、実際にダストが跳躍したり群れをなして飛び回ったりしていることを示しています。そう考えるのが自然です。帯電した月のダストの移動はアポロ17号での月面微粒子検出装置(LEAM:Lunar Ejecta and Meteorites)でも高電位に帯電したダストが検出されたと考えられています。」とCollier氏は付け加えた。

サーベイヤーで観測されたホライズングロー

私たちには月は何も活動しておらずまるで死の世界のように見える。しかし、大気が無いため月面には太陽からのプラズマと呼ばれる高温で電離した粒子が時速100万マイルという速度で降り注いでいる。この太陽光と太陽風の効果により目には見えないが活発な活動が月面上で生じているのだ。太陽の日光が当たる部分ではマイナスに帯電した電子がはじき出され、プラスに帯電する。夜または影の部分では、太陽風によって運ばれた電子によってマイナスに帯電する。
月のダストをはじき飛ばす仕組みは複数あると考えられている。例えば微小流星体の衝突時のエネルギーで表面の粒子が飛ばされるだろう。そして月面が凸凹の場合は局所的に高い電場が発生し表面から電気的にダストをはじき飛ばす事が可能になる。これは月面の太陽光が当たっている部分はプラスに帯電し、影の部分はマイナスに帯電する傾向があるためである。
帯電した物体同士ははじき合うので、太陽光があたる部分のプラスに帯電した粒子はプラスに帯電した表面からはじき出される。もし近くにマイナスに帯電した部分が無ければ、ダスト粒子はそのまま真上方向に上昇する。しかし、クレータの底のようなマイナスに帯電した地域があればそこに引っ張られるようにクレータの上を移動していく。同じように逆側のクレータの縁の部分でプラスに帯電した粒子が引き寄せられて同じスピードで行き交い、一方、マイナスに帯電した表面ではそこの粒子がクレータを越えて逆方向にはじき飛ばされる。多数の粒子がこのように振る舞うため、クレータの上にはこのモデルで示された蜂の群れのような状態でダストが飛び交うことになる。
単純に考えれば、クレータの縁とその反対側の縁の間でダスト粒子が飛び交い続ける事になる。しかし実際は、クレータリムの高さの違いや、クレータ底面の凸凹具合、太陽風の干渉による電場の弱体化によるダスト飛翔経路の変化などで状況が変化する。これらはダストの落下と放出に同じように影響する。「このモデルは小惑星帯のエロスなどのクレータに堆積しているダストに対しても同じように適用できます。」とCollier氏は言う。
「このような外乱によって月や小惑星の周囲のダストの飛翔経路がどのように変化するか計算することによって将来の研究分野が広がることにつながります。」とCollier氏は言う。「特に、私たちはいったいどれくらいの粒子がこのように飛び回っているのか知らないのが現状です。それは千個、100万個?それとも10億個かもしれません。私たちは研究を続けていったいどれくらいの粒子がこのような振る舞いをしているのか知りたいと考えています。月の表面の大部分はダストで覆われているので、10億個程度は飛び回っているのかもしれません。」また、研究チームはクレータの影を覆うダストを評価するためにアポロ時代の画像解析も行なっているところだ。
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写真上:NASAの月偵察衛星から撮影したカウベスクレータの北側のクレータリム付近。ダストの跳躍はこのような太陽が当たっている面と当たっていない影の面が近い地域で観測されると考えられている。Credit: NASA/GSFC/Arizona State University
写真下:サーベイヤ7号で撮影された月の地平線付近のホライズングローの写真。白色の帯状のものが異なる時間で観測されたホライズングロー。 Credit: NASA

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