月の岩石を呼吸する~月で酸素を製造する方法


2006年5月5日付けScience@NASAに「月の岩石を呼吸する~月で酸素を製造する方法」という記事が掲載されています
月の砂を吸い込むのではなく、月の砂の組成の50%以上を占める酸化物から呼吸に必要な酸素を抽出しようという話です。詳しくは以下を。


 月には酸素が大量にある。それは地面に含まれている。
 アポロの宇宙飛行士たちに指摘された厄介な問題は月ダストである。月ダストは、人の肺も含めて、どこにでも入り込む。しかし奇妙なことに、将来の月探査ではそのダストを使って呼吸する予定である。ダストの成分の半分は酸素なのだ。

宇宙飛行士

 「私たちはサンプルを気化させているだけです。」NASAのゴダード宇宙センターのEric Cardiff氏はいう。彼は月や火星で必要な酸素を宇宙飛行士に供給する方法を開発しているチームのうちの1つを取りまとめている。
 月の砂は酸素を多く含んでおり、組成で最も多いのは二酸化珪素(Si02)で、「ビーチの砂のようなものです」とCardiff氏は言う。その次に多いのは酸化カルシウム(CaO)で、順に酸化鉄(FeO)、酸化マンガン(MgO)となる。全ての酸化物を合わせると月の砂の重量の43%が酸化物で形成されていることになる。
 Cardiff氏のチームは月の砂を加熱して酸素を取り出す方法を研究している。「化学の初歩です。」と彼は説明する。「どんな物質でも熱すれば原子に分解できます」その方法は減圧熱分解(vacuum pyrolysis)といわれている。pyroとは熱を意味し、lysisとは分解を意味している。
 「いろいろな観点から見てこの方法が一番魅力的です。」とCandiff氏は言う。「それは地球から何か原料を持っていく必要もなく、特定の鉱物を選別する必要もありません。」単にすくい上げて熱を加えるだけだからである。
 その証明として、Cardiff氏たちはレンズで太陽光線を小さな真空チャンバー内に集め10グラムの月の砂シュミラントを摂氏2500度まで加熱する実験を行っている。テストしているサンプルはイルメナイトとミネソタ・ルナ・シュミラント(MLS-1a)の混合物である。イルメナイトは鉄とチタンの化合物で地球と月に共に存在する物質だ。MIS-1aはスペリオル湖の北岸の数十億年前に形成された火成岩の粉砕物とガラス粒子を月の砂の組成にあわせて混合したもの。このような実験には実際の月の砂は高すぎて使えないのだ。

真空チャンバー内の月の砂シュミラントに太陽光線を集めるレンズ。酸素とスラグを産出

 彼らのテストでは「シュミラントの20%が酸素として気化」しているとCandiff氏はいう。後にはスラグといわれる、酸素含有量が少なく金属含有量が多いガラス状の物質が残される。Candiff氏たちのチームはNASAラングレー研究センターで、スラグを使えるもの、例えば遮蔽材、レンガ、何かのスペア品そして道路舗装材などに形成する方法についても研究している。
 次のステップは、効率を上げることだ。「5月には超高真空下で低温での実験を行う予定です。」と彼はいう。超高真空下では、酸素はより少ない温度で気化させることができる。Cardiff氏の最初の実験は1/1000トールで行われた。1/100万トール―今までの実験の1/1000の真空度―で「必要な温度はきっと劇的に少なくなるでしょう。」と彼は言う。

スラグ---Cardiff氏の実験装置にできた酸素含有量が低い副産物。スラグはレンガ、道路舗装材、遮蔽材として使えるかもしれない

 このような研究を行っているのはCardiff氏だけではない。Pioneer Astronautics in Lakewood社のMark Berggren氏らのチームは月の砂を一酸化炭素に曝すことで酸素を得るシステムを研究中だ。ある実験では彼らは100キロのルナシミュラントから 15kgの酸素を得ており、Cardiffの減圧熱分解より高効率である。
カナダのカノガパークのPratt & Whitney Rocketdyne社のD.L. Grimmett氏はマグマ電気法(magma electrolysis)について研究している。その方法ではMLS-1を摂氏1400度まで熱し、マグマ状に融解したものに電気を通して酸素を取り出す。その他にも多くの研究が行われている。
 NASAとフロリダ宇宙研究所ではNASAの新宇宙政策に関連し、MoonROx、月レゴリス酸素製造コンペを主催している。8時間内に5キロの呼吸可能な酸素を月の砂シュミラントから製造したチームには250,000ドルが送られる。コンペの締め切りは6/1だ。
 何か良いアイデアがあれば?
 
写真上:酸素を豊富に含む月の石と砂をすくうアポロ17号の宇宙飛行士Harrison “Jack” Schmitt(写真:NASA)
写真中:真空チャンバー内の月の砂シュミラントに太陽光線を集めるレンズ。酸素とスラグを産出(写真:NASA)
写真下:スラグ—Cardiff氏の実験装置にできた酸素含有量が低い副産物。スラグはレンガ、道路舗装材、遮蔽材として使えるかもしれない(写真:NASA)

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