月の嵐~アポロ実験から明かされた事実


2005年12月7日付けScience@NASAに「月の嵐~アポロ実験から明かされた事実」という記事が掲載されています。
月面で夜から朝に、または夕方から夜になるとき、太陽光線が当たる部分とあたらない部分の境目をターミネータ(昼夜境界線)と言います。そのターミネータ付近で、電界が生じ、レゴリスが舞い上がるという記事です。アポロで設置した観測機器でもその現象が観測され、軌道上の宇宙飛行士もスケッチを残していたと書かれています。
レゴリスの舞い上がり(月ダスト)は、様々な問題を引き起こすので、ターミネータの移動に伴う月ダストの発生は今後注目していく必要があるでしょう。詳しくは以下を。


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月の夜明け、2週間の夜が明け月の砂の上に最初の太陽が昇った時、奇妙な砂嵐が月の表面を駆け回る。
今度月を見上げたとき、ターミネータに注目してほしい。ターミネータとは月の夜と昼の境界線(昼夜境界線)である。ここに砂嵐が発生している。それは長く広がった弱い砂嵐で、月の北極から南極まで広がっており、表面に沿って渦巻いている。太陽の動きに合わせてターミネータも月の表面を一周する。
月にこんな砂嵐があるなんて聞いたことが無い人も多いだろう。だが月の科学者たちはますますこの砂嵐が実在する確信を強めている。
その証拠は昔アポロ計画で月面に設置されたLEAMという計測装置からもたらされた。

LEAMの写真。手前の箱型の計測装置がLEAM。(画像:NASA)

「アポロ17号で1972年にその装置は月に設置されました。」MASAゴダード宇宙センターの太陽系探査部門のTimothy Stubbs氏は説明する。「その装置は月表面に衝突する微小流星体によって引き起こされる二次的なダスト計測するためのものでした。」
数十億年前、隕石が月に絶えず降り注ぎ、月面の岩石を粉砕し自身の破片で月面を覆い尽くした時代があった。これが月の表面が細かい砂で覆われている理由である。今日そのような隕石の衝突はめったに起こらなくなったが、まだ時々発生している。
アポロ時代の科学者たちは、微小流星体の衝突でどの位の2次的なダストが発生するかを計測したいと考えた。そしてそのダストの特徴を知りたかった。LEAMはダストの速度、エネルギ、飛んでくる方向を3つの観測装置で計測しその疑問に答えるものであった。
その結果得られたLEAMの30年前の計測データは興味深いもので、現在でもNASAと大学の研究者によって再検討が行われている。ゴールデンのコロラド鉱業大学のGary Olhoeft教授もその一人だ。
「そのデータには誰もが驚きました。」とOlhoeft教授はいう。「LEAMは大量のダストが、毎朝、上下方向からではなく東または西から、隕石の衝突から発生した場合よりも遅い速度で発生していることを明らかにしたのです。」どうしてこのようなダストが発生しているのだろうか?Stubbs氏はある推測をしている。「月の昼側はプラスに帯電し、夜の側はマイナスに帯電しています。」そして夜と昼の境界線では・・・彼は説明をつづける。「静電気で帯電したダストが地上の電場によってターミネータを横切って飛ばされているだろう。」(月の水のみ場理論参照⇒)
さらに驚いたことを、Olhoeft教授が続けて述べている。「月の日の出から数時間は、計測装置の温度がとても上昇–沸点(100度)近くまで上昇し、LEAMのオーバーヒートを避けるため電源を落とさなければならなかったのです。」
この奇妙な現象は、Olhoeft教授は以下のような理由を推測している。「帯電したダストがLEAMに付着し、LEAMが反射すべき太陽光線の量を減らしたのだろう。」
だがまだ誰も確かなことはわからない。LEAMが計測したのは短時間にすぎない。凍りつくような月の夜間の620時間と焼け付くような月の昼間の150時間でアポロプログラムが終了する前にそのスイッチは切られたのだ。

アポロ17号の宇宙飛行士による薄明光線のスケッチ。(画像:NASA)

宇宙飛行士もそのダストを観測しているかもしれない。月軌道上で、アポロ8、10、12、そして17号の宇宙飛行士が月面上に舞い上がったダストからもれてきた薄明光線のスケッチを残している。NASAのサーベイヤ探査機は宇宙飛行士たちが見たものと同じような夜明けの「ホライズン・グロー」の写真を撮影している。
そのような嵐は地球から観測することもできるはずだ。実際何世紀にもわたって、月面が光るなどの月の異常現象(lunar transient phenomena:LTPs)が報告されている。幾つかのLTPsでは月面での発光現象で、これは月面に隕石が衝突した証拠と考えられる。だがそのほかには、明確な形の無い赤みが帯びているまたは淡い光や薄暗く霞んだ地域などが形を変え数秒から数分で消滅する現象も報告されている。今までの説明は、火山ガスの発生から観測者の思い込み(地球外生命体なども含む)までもあり、決して満足できるものではない。
現在、Olhoeft教授は言うような新しい科学的説明が支持を集めつつある。「LPTsは電気的に舞い上がった砂の流れに太陽光線が反射したのが原因ではないだろうか。」
これらはNASAにとっても重要だ。2018年には宇宙飛行士が再び月へ向かうからである。月の夜明けを経験していないアポロの宇宙飛行士とは違い、次の月探査の宇宙飛行士たちは月に恒久的な施設を建築する予定である。その施設が砂嵐に巻き込まれるかもしれない。
でも砂嵐が発生したとしても、非常に薄くて目に見えるものではなくあまり害は無いだろう。問題があるとすれば、宇宙服に付着したり、表面を覆い機器をオーバーヒートさせたりすることだろう。
写真上:LEAMの写真。手前の箱型の計測装置がLEAM。(画像:NASA)
写真下:アポロ17号の宇宙飛行士による薄明光線のスケッチ。(画像:NASA)

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