月は惑星探査の学校だ


2月14日付けSciencs@NASAに「月は惑星探査の学校だ」という記事が掲載されています。
NASAが火星有事探査から月有人探査に方向転換した理由の1つに「月探査を通して他の惑星への有人探査技術を開発、実証する事ができる。」という項目があります。これは、ブッシュ大統領の演説でも触れられています。(ブッシュ大統領演説全文訳参照)
 月は大気が無いので、若干の大気がある火星より、例えば昼夜の温度差が大きいなど、過酷な環境になっています。また、月の夜は15日間続きますので、月の夜間をサバイバルする技術を獲得できれば、火星で充分に活用できます。
 この記事で特に話題にされているのが、月ダストにかかわる問題です。月には大気が無いため、ダスト粒子が鋭い角を持ったまま存在しています。そのため機械的な回転部分は、充分にシールする必要があります。詳しくは以下の日本語訳を。


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NASAは、約半世紀にわたって宇宙探査を続けている。だが「私たちがわからないことがある。惑星を探査する最も良い方法はどんな方法か?ということだ。」とジョーンズ・ホプキンス大学の上級惑星科学者のPaul D. Spudis氏は言う。
最も効率的な惑星探査技術を開発することは、南極探査を行った先人たちが経験してきた、南極での最も効率的な掘削技術や南極でも充分によく動く機器の開発経緯と同じく、それ自体が最先端技術である。
南極探査のために、大学の鉱山学科に予算が与えられたり、アメリカ陸軍が極地工学研究所を設立したのと同じ理由で、NASAは月を惑星探査の大学院として使う構想をもっている。

月の地質調査を行う宇宙飛行士とロボット

月では、低重力、高真空、強烈な放射線、そしてダストや昼夜の温度差の問題が発生する環境―地球上では再現できないこれらの複数条件の環境下で、宇宙飛行士たちが、居住施設の建設法、資源の利用法や利用する機械の操作法などのテストと開発ができる。月で学んだことは月だけでなく火星へ向かう際の基礎となるだろう。
月面大学院のカルキュラムで最も重要な課題は、惑星探査における人間とロボットの最も良い協調方法は?ということになるだろう。無人探査機やローバは月や他の惑星から数百ギガバイトにもなる観測データを送ってきている。だが地質学的な分野では、Spudis氏が言うには、ハンマーを持った経験豊かな地質学者に勝るものは無い。
そのような理由で、NASAは人間と機械の最も良い役割分担について研究している。有望な分野のひとつは、外科手術の一部で使われているのと同じような遠隔操作技術だろう。充分に放射線が遮蔽された月面居住施設内で、地質学者の挙動は「すぐさま月面上のロボットに伝えられ、その結果、まるで宇宙服のグローブを通して宇宙飛行士が感じるのと同じような感覚が帰ってくる。」Spudis氏は説明する。しかしこれが最も良い方法だろうか?ある状況では、人が判断するより高速な反応が可能な仕組みをロボットに搭載した方が良い結果をもたらすだろう。

遠隔操作ロボットによる探査(想像図)

月探査から学べるもう1つの重要な事柄は、「砂に含まれる有用な物質を精製する方法だ」とSpudis氏はいう。月や火星では、必要な物質全てを地球からの輸送に頼る訳にはいかないので、現地の物質を利用する方法が重要になるだろう。「太陽エネルギー以外は、宇宙探査ミッションで使ったことが無いのです。」Spudis氏はいう。「私たちは「それを使う方法」を理解しなければいけません。」
NASAでは、現地で資源調達するというISRU:In-Situ Resource Utilizationという研究を行っている。ISRUは、基本的には、どのようににして表面を掘削し、どのようにして砂を低重力状態でホッパーに入れ(実は極めて厄介な問題がある)、どのようにしてそれらを砕き有用な物質やガスを抽出するために加熱するか?という、一見すると簡単で機械的な問題も少なく見える作業について研究している。
では月の砂:レゴリスには宇宙飛行士たちが必要しているものが含まれているのだろうか?最も緊急に必要なのは酸素でと水素である。「これら2つの物質があれば、飲料水を副産物とする燃料電池セルから電気を取り出すことができます。」Spudis氏は説明する。

宇宙飛行士の足跡。必要な資源はそこにある。

「もちろん水素と酸素はロケットの燃料でもあります。酸素は呼吸に必要です。」
良いニュースがある。月には酸素が豊富である。月の表面には重量パーセントで40パーセントの酸素があり、NASAの科学者たちは、酸素を抽出する様々な方法を研究している。最も簡単な方法は、月の砂を高温で加熱しガス状の酸素を抽出する方法である(この方法についてのもっと詳しい情報は「月の砂を呼吸する」を参照)。もっと効率的な方法があるかもしれない。
良くないニュースもある。月で水素は非常に少ない。NASAがクレータの永久影部分に100億トンの氷があるかもしれない月の極を、最重要探査地点にしている理由がここにある。「氷は水素の塊です」Spudis氏は説明する。月の極に関する経験は火星でも使えるかもしれない。火星の極にも地中深くに氷があると考えられているからだ。
「私たちは、月で事業を始める明確で簡潔な理由があるのです。」最後にSpudis氏は以下のような言葉で話を終えた。「月は惑星探査の学校なのです。」
写真上:月の地質調査を行う宇宙飛行士とロボット(画像:NASA)
写真中:遠隔操作ロボットによる探査(想像図)(画像:NASA)
写真下:地面にある酸素。月表面の重量パーセントで40%は酸素である。アポロ11号ニール・アームストロングの足跡。(画像:NASA)

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