月への硬着陸~LCROSSの月面衝突実験


7/29付けScience@NASAに「月への硬着陸」という記事が出ています。
月偵察衛星(LRO)と一緒に打ち上げられる、月面衝突実験機LCROSSに関する記事です。
LCROSSとは月面に衝突してその際に発生するダストの観測から、月の氷の存在を確かめようというミッションです。同じような試みとして1999年には月探査機ルナ・クロスペクターが月面に衝突しましたが、その際には氷の存在は確認出ませんでした。今回はルナ・プロスペクターの衝突エネルギーの200倍以上なので、氷の存在の確認ができるのではないかと期待されているようです。以下要約です。


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1959年、1機の探査機が晴れの海近くの月面に硬着陸した。その探査機はソビエト連邦のルナ2号で、月面に到達した初めての人工物体となった。
信じられないかもしれないが、それから何十もの月探査機が月面衝突を目的として建造されたのだ。
NASAで最初に月面衝突を行った探査機はレインジャーで、1960年初めに建造された。5回、車ほどの大きさの探査機が月面に硬着陸、硬着陸まで写真を撮影した。最初はクレータ、次に岩を、そして砂を撮影し地面に硬着陸した。データは地球に伝送されアポロ計画のための貴重なデータになった。

ルナ2号

NASAは月面着陸技術を身につけた後も、硬着陸を続けている。1960年後半から1970前半にかけては、アポロで設置された地震計のために巨大なサターンロケットブースターを月面に衝突させている。月の非一様な重力場は衛星を様々な方向に引張り、頻繁に軌道修正をおこなわなければ、人工衛星はすぐに月面に落下してしまう。このため、月は古い宇宙船の格好の墓場になっている。NASAの5つの月周回衛星(1966~1972)、4つのソビエトの月探査機(1970~1971)、そして日本のひてん(1993)、NASAのルナプロスペクター探査機が最後には月面に衝突しクレータを作っている。
これらの経験が役に立つときがきた。NASAの研究者たちは月の氷探査のために硬着陸技術を再び使おうとしている。このミッションはLunar CRater Observation and Sensing Satelliteの頭文字をとってLCROSSといわれている。この研究チームのリーダ、エイムズ宇宙センターのTony Colaprete氏はこのミッションについて以下のように説明している。
「私たちは月のクレータの永久影の部分に氷が隠れていると考えています。従って私たちはそのようなクレータの1つに何かを衝突させ、デブリを巻き上げ、それを分析し氷の有無を確認しようとしています。」
氷の存在の確認は重要である。再び人類が月へ戻ったとき、水が必要ならばそこに行けばよいのだ。水は水素と酸素に分けられ、燃料と呼吸用に使われる。月の砂と混ぜればコンクリートができ、建築材料になる。水は放射線遮蔽物として使え、飲料用としても使える。地球から水を持っていくこともできるが、それは非常にお金がかかる。一番良いアイデアは月の砂から水を直接得ることである。
でもそこに本当に水があるのか?答えはLCROSSが出してくれる。
その探査は2008年に、月偵察衛星(LRO)と一緒にLCROSSが地球を離れる所から始まる。打ち上げ後2つの探査機は分離し、LROは月軌道へLCROSSは月面衝突へ向かうのだ。
実際、Colaprete氏は言う。「2回の衝突を計画しています。」LCROSSは2つの衛星なのだ。小さく賢い母船と、大きく賢くないロケットーブースターで構成されている。母船は誘導衛星(SSC:Shepherding Spacecraft)といわれている。なぜならその衛星がロケットブースターを月へと導くからだ。その2つの衛星は月まで一緒に行くが、衝突は別々になる。

写真中:LCROSSの衝突想像図(画像:NASA)

ブースターが最初に衝突し、2トンの質量と100億ジュールの運動エネルギーが熱と光の閃光を発生させる。研究者たちは20mのクレータができ40kmの高さまで上昇流があがると期待している。
そのすぐ後ろで、誘導衛星が衝突の撮影をし、デブリの上昇流の中を通り過ぎる。搭載された分光計が水(H20)や水の構成物質(HO)、塩、粘土、水和した鉱物や高分子化合物などの証拠を求めて観測を行う。「もし衝突地点に水やその他興味深い物質があったなら、きっと見つけられるでしょう」と Colaprete氏は言う。
最後には誘導衛星自体も月面に衝突する。かつてのレインジャー号のように、月面に突入し、写真を多数撮影する。そして地球では、ブースターによってできたクレータが次第に大きくっていく映像が見られるだろう。
月面に衝突する寸前まで、誘導衛星は水の特定を続ける予定だ。「衝突の10秒前までデータをモニターできます。」Colaprete氏は言う。「そしてブースターの衝突クレータの100m以内に衝突させることができます。」
誘導衛星はブースターの1/3の重さしかなく、衝突の規模もそれだけ小さくなる。しかし誘導衛星の衝突によっても、ブースターの衝突と同じようにクレータが生じダスト舞い上がる。天文学者たちは両方のダストが地球から観察できると期待している。

写真下:月の南極のシャクルトンクレータ。LCROSSはここに衝突する予定(画像:NASA)

1999年のクロスペクター衝突を覚えている人も多いだろう。クロスペクターは月の南極のシューメーカークレータに衝突させられ、LCROSSと同じように氷探査が行われた。だが氷は何も見つからなかった。
「LCROSSはより成功する確率が高いです。」Colaprete氏は言う。例えばLCROSSの衝突エネルギーはクロスペクターの200倍以上あり、より深いクレータが生じ、はっきり見える規模のデブリの舞い上がりが生じるだろう。またクロスペクターは25万マイル以上はなれた地球の望遠鏡でしか観察できなかったのに対し、LCROSSのダストの舞い上がりは、誘導衛星によって極めて近い距離で、ダスト計測に特化した観測機器で計測される。
最後の疑問は、LCROSSはどこに衝突するのかということだ。
「まだ決定していません。」彼は言う。衝突地点は昔に彗星が衝突した際に残された氷が今でも残っているような、月の極のクレータの永久影部分である。その他の候補は溶岩洞窟や峡谷部分だ。「候補地は沢山あります。これから多くの研究者と数多くの候補地を比較検討して1つに決めるでしょう。」
決まったらScience@NASAでまた報告しよう。
写真上:ルナ2号(画像:NASA)
写真中:LCROSSの衝突想像図(画像:NASA)
写真下:月の南極のシャクルトンクレータ。LCROSSはここに衝突する予定(画像:NASA)

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2 Responses

  1. napsucks より:

    crash landingを"軟着陸"と訳されているようですが誤訳では?

  2. ゲツメン より:

    ご指摘感謝します。軟着陸→硬着陸に修正しました。

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