月ダストの飛散に注意


11/23付けSCIENCE@NASAに「月ダストの飛散に注意」という記事が掲載されています。
久々に月ダストに関連する話題です。
月面着陸および月面からの離陸の際に引き起こされる月ダストの飛散により様々な弊害が起こる可能性があり現在研究中だそうです。その事実が認識されたのはアポロ12号の時。アポロ12号はサーベイヤー3号から約200m離れた地点に着陸し、持ち帰ったサーベイヤーの部品にはアポロ12号の着陸により引き起こされたダストが衝突した微小なクレータが数多く発生していたとこのことです。
対策としては、盆地のような地形に着陸ポートを作るなどの案が検討されているとのこと。概訳は以下。

金網にあいた穴

ケープカナベラル、シャトル発射場からそれほど遠くないところに無残に穴の開いた金網のフェンスがある。そこには「飛んでくる石に注意」と書かれている。
「シャトルの固体ロケットブースターの強力な噴射がエンジンの下に穴を掘ってしまうのです。」とケネディ宇宙センターの物理学者Phil Metzger氏は説明する。「幾つかの打ち上げでは、50cm程度の穴が開き、0.5kmほどもその破片が飛び散りこんな穴を作ってしまったのです。」
この場合は充分に安全な距離まで離れれば何も問題ない。だがMetzger氏は同じことが月で起こったらどうなるのか心配している。
NASAは次の10年以内に月に戻り恒久的な月面拠点をつくろうとしている。そこには居住施設、ローバ、貯蔵施設、採鉱施設などが設置される予定だ。そこから宇宙船が頻繁に着陸または飛び立つ。そのときに発生したデブリはおそらくケープカナベラルの場合以上に飛び散るはずだ。Metzger氏はこの問題を彼の所属するケネディスペースセンターのGranular Mechanics and Surface Systems研究室の仕事の一環として研究している。
「大きな岩は大丈夫です。」と彼は言う。月の宇宙船はスペースシャトルのように重くないので月の重力を脱出するためにそれほど強いエネルギーは必要ないからだ。6機のアポロ宇宙船の着陸と離陸の映像を見ても宇宙船のエンジンの影響で転がる砂利以上の大きさの物質が飛び散る様子は見当たらない。

月面着陸想像図

その代わりに Metzger氏が心配しているのは非常に小さい物質、「月ダスト」である。
地球では、ロケットの発射時に飛び散るダストや砂に注意しなくてもよい。なぜなら「大気の抵抗があるので、軽い物質は急速に速度を失い、数メートル飛び散っただけで害がなくなるからです。」と彼は説明する。しがし月ではどうか?「月には小さな物資の速度を遅らせる大気がありません。」小さな砂は高速でとてつもない距離を移動し、その道筋にある全てのものの表面を擦っていく。
これはただ単に理論上いえることだけではない。1969年12月、アポロ12号の月着陸船が1967年に月に着陸した無人探査船サーベイヤー3号からおよそ200mの地点に着陸した。アポロ12号の宇宙飛行士はサーベイヤー3号まで歩き写真を撮り幾つかの部品を地球に持って帰った。その結果、サーベイや3号の大部分は、打ち上げ時は白だったが、2年半の間月の環境に曝された結果、茶色に変色していることがわかった。

サーベイヤー3号とアポロ12号

しかし、アポロ12号着陸船の方を向いていた部分は着陸船で飛び散った砂によってもとの白色を取り戻していた。また、「全てのボルト、ケーブル、取付金具でその砂から守られた部分がはっきりとサーベイヤーに影を残していたのです。」とMetzger氏は言う。その後の実験から、その飛び散った砂は1~10マイクロメートルの直径であることがわかった。
砂が当たった部分の表面には高速で微細な砂粒子が衝突したことによって30~60マイクロメートルの微細な衝突クレータがあばた状に発生していた。さらに、サーベイヤーのカメラの中にさえ、細かい砂利によって小さなひび割れや割れ目が発生していた。
この事実をMetzger氏は非常に気にしている。なぜなら高速で飛び散る細かい砂利が温度調節装置の放熱面に傷を付け、窓や他の光学レンズをぼろぼろにし、ソーラーパネル表面を危険に曝し、掘削装置や宇宙服のつなぎ目に入り込み、異常な摩擦や機械の故障を引き起こすからだ。
それなら、問題を起こす砂が飛び散らないように充分に遠くに着陸すればよいのでは?
答え:走らない限り無理、隠れることはできない。ロケットの離着陸によって巻き上げられた月ダスト粒子は理論的には月を一周するのだ。
Metzger氏のチームはサーベイヤー3号にできたクレータを解析しその原因となった粒子は少なくとも400~1000m/sの速度で飛んできたことを明らかにした。「実際、粒子は着陸船の排気ガスの速度―1~2km/sとほぼ同じ速度で飛んでくるのです。」
水平速度1.7km/sの速度をもつ粒子は月を一周する前に落下する。そのスピードが2km/sまで上昇すると、その粒子は月を一周することができる。もしその軌道上に山が無ければ、その粒子は永遠に月を周回し続けるようになる。
現在、Metzger氏はNASAのエンジニアチームと協力し月着陸および月離陸の影響を少なくする研究を行っている。1つの計画は山や丘などのダストをブロックするような地形に囲まれた地点に着陸ポートを設置することである。人工的な盛り土や他の防御システムなども解決策の1つである。
Metzger氏は言う。「私達はちょうど今その問題に取り組んでいるところです。」何か新しい動きがあればまた報告しよう。
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写真上:穴の開いたフェンスで飛んできた石の大きさを説明するMetzger氏。(画像:NASA)
写真中:月着陸船想像図(画像:NASA)
写真下:月面着陸時の砂の飛び散りに関するデータを提供したサーベイヤー3号の近くに着陸したアポロ12号。(画像:NASA)

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