月面でのビッグエア~月面フリースタイルスキー


2006年2月14日付けSience@NASAに「月面でのビッグエア~月面フリースタイルスキー」という記事が掲載されています。トリノオリンピックにあわせた「月面オリンピック」企画その②です。
月でフリースタイルスキーをやったらどうなるか?とういう記事です。最後まで読んでいただけるとわかるのですが、重力が小さいので滞空時間が長くなり、地球ではできないような大技が決められるが、月の砂(レゴリス)が厄介な問題になるだろうだと書かれています。宇宙服がレゴリスのダストまみれになることと、レゴリスでKickerといわれるジャンプ台を作ろうとしても、雪のように固まらないという2つの点が問題のようです。記事では、固めるためにマイクロ波でレゴリスを溶かして固めることが提案されてます。
回転技の日本語訳は適当です。あと「Go big or go home」は何か適訳はあるのしょうか?知っている方がおりましたらご指摘ください。以下概訳です。


オリンピックフリースタイルスキー選手Eric Bergoustが月でのスキージャンプの可能性について語る。
「でっかく決めるか、出直すか(Go big or go home)」アメリカのフリースタイルスキーオリンピックチームのスローガンである。
「でっかく」というのは「大きなエアー」という意味だ。それは地上から20m、5階建てのビルに相当する高さにもなる。フリースタイルスキーでは街中を疾走するバイクと同じくらいの速度で空中に飛び上がり、回転し、ひねりまた回転する。空がひっくり返りめまいをおこしそうになるがそれは許されない。飛び上がって3秒後には着地しなければならないからだ。
「そして見慣れた地面に着地するわけではないんだ」とフリースタイルスキーのゴールドメダリストEric Bergoustは言う。
Bergoustは世界で始めて3回転4回ひねりを成功させたスキーヤーだ。1989年、練習で大きな失敗をした数時間後、彼は長野オリンピックで勝利している。その時彼が出したスコアーはそれまで誰も出したことがない高スコアーだった。そして今年彼はトリノオリンピックに参加している。
Bergoustは創意工夫も得意だ。彼は着地の衝撃を和らげるためにプールを使った着地練習法を開発している。またジャンプ台を、「kickers」といわれるより長く安全に飛べるものに改良した。そしてジャンプに回転を与える片方の手を上げたプロペラスタイルという彼のジャンプ方法は盛んに真似されている。
彼の次の目標はこうだ。「月でジャンプをしたい。そこは新雪(月のダスト)だらけだ!」彼は続ける。「そして1/6Gだからきっともっと長く飛んでいられるはずだ」滞空時間が長ければもっと回転することができ、そうすれば金メダルは確実だ。
●検討課題:
地球では滑降する斜面の角度は大体23度くらいに設定してある。20m下にあるジャンプ台に達する頃には70kmくらいのスピードになる。ジャンプ台はスキーヤーから見るとまるで壁みたいに見えるが、実際は空中ブランコが描く軌跡と同じ斜面で、ほとんど垂直に空中に飛び出す。Bergoustが考案した kickersでは飛び出すときの角度は70度だ!3秒後にはジャンプ台から20m下に着地する。
ここで地球と全く同じ斜面、同じジャンプ台、同じスキーヤーで月でどうなるか考えてみよう。月の重力は低いため、Bergoustはより少ないペースでしか加速できず、ジャンプ台ではたった28kmしかスピードが出ていない。地球では、そのようなスロースピードでは大失敗になる。でも月ではそれが精一杯なのだ。でもジャンプ台からそのスピードで空中に飛び出したあと、それまで見たことも無い7秒間ものエアを決めることができ、地球の2倍以上の回転が出来るだろう。
Bergoustは1998年に4回ひねり3回転で金メダルを取った。その後その技にさらにひねりが加えられ5回ひねりという技が生まれている。おそらくトリノの男子フリースタイルスキーで金メダルを取るのはその技だろう。月では、さらに4回ひねりと3回転を加えるだけの充分な時間がある。「そうすると・・・」Bergoustは計算する。「・・・8回ひねり6回転が出来る」これだけできれば金メダルは絶対だ。
●新たな問題点。
月のダストは、確かに雪のような粉末だが、全く雪と同じというわけではない。雪とは逆に、月のダストは非常に粘着性がある。ダストは気の遠くなるような長い時間をかけた隕石の衝突によって作られたとて尖った角度を持ったガラスと鉱物の粒子で出来ている。雪と比べると、月のダストは「鈍い斜面」、もしかすると「とても鈍い斜面」でジャンプには適さないかもしれない。
この問題に対しては、スキーヤーはテフロンやその他の低摩擦材を塗った超スリックスキーが必要になるだろう。一番良いのは薄膜ダイヤモンドかもしれない。カーボンフィルムのような薄膜のダイヤモンドは地球上ではテフロンに匹敵する低摩擦性を示し、しかもダイヤモンドの特性として鋭角を持った砂粒子のような物質による引っ掻き傷もほとんど付かない。
もう1つの問題は「kicker」だ。地球上では「kicker」は雪で作られる。それは斜面の形状をした木製の巨大な型枠に雪を押し固めて作る。その時水のスプレーを使うことで雪の粒子同士を接着させ摩擦の無い斜面を作ることができる。そしてその型枠を分解すれば、「kicker」が出来上がるわけだ。
同じ事を月でもできるか考えてみよう。月面で型枠を組み立て月のダストをそこに押し固めていく。その時水は使えない。水は月の高真空では即座に昇華(気化)してしまう。ダストは乾いたままだ。さて型枠をはずすと、なんてこった、そこには不恰好なダストのボタ山が残っているだけだ。
この問題を解決するにはマイクロ波が使えるかもしれない。地球上の実験では、電子レンジで月のダストが解けて固まることが知られている。月のダストにマイクロ波を照射し、適した「kicker」が作れるだろう。

Kickerと呼ばれるジャンプ台

 
●最後の問題-着地
 地球では、負ルースタイルスキーでは柔らかな雪の上に着地し、着地の衝撃のクッションの役割を果たす。月では柔らかな月面ダストの上に着地する。おそらく大量のダストが舞い上がり、スキースーツはダストまみれになるだろう。
何か問題があるだろうか?アポロの宇宙飛行士を見ればその答えがわかる。彼らは宇宙服にダストが付着するのを嫌った。黒っぽいダストは太陽光線を吸収し、スーツをオーバーヒートさせる。鋭角を持ったダスト粒子はスーツの気密を壊しリークを誘発する。ダストで覆われたバイザーでは周りを確認できない。きっとスキーヤーのスーツにはエアーの後の滑降が困難になるほど大量のダストが付着するだろう。ダストによる問題は他にもいろいろある。。。。
Bergoustは問題を解決できると考えている。何年もかけスキーを改良し、ジャンプ台を再設計し、新しい技を取り入れ、新たなる挑戦に対する準備は常に出来ている。
 
彼はいう。「まずは宇宙服を見つけなきゃな」
写真:「kicher」といわれる雪を固めたジャンプ台。月でどのように作るかが問題。(写真:NASA)

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