月面での100の爆発


5月21日付けSCIENCE@NASAに「月面での100の爆発」という記事が掲載されています。
今まで懐疑的な目でも見られることが多かった月面発光現象について、組織的な観測が行われデータの蓄積が進んでいるようです。NASAのチームでは2年半の観測で100回の月面発光現象を観測したそうです。
発光現象の原因は微小流星体などの衝突。微小流星体が有人月面活動の際に直接人に衝突する危険は確率的に低いのですが、衝突によって数千個もの直径1mm以下の2次的な粒子が発生しそちらの方が危険だとのこと。直径1ミリ以下でも弾丸程度の速度にもなり宇宙服を貫通する危険があるらしい。現在、模擬月面への衝突実験でその2次的粒子の広がる範囲についての研究が行われているようです。
概訳は以下。


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最近まで、月面で発光現象を見たという人達は天文学者達から疑いの目で見られてきた。そんなレポートはL印・・・「Lunatic」を付けられてファイルされたものだ。
今ではもう違う。2年と半年の間、NASAの天文学者達は月面での発光現象を、1度といわず100回も観測している。
「それらは月に衝突する隕石によって引き起こされる爆発なのです。」NASAのマーシャル宇宙センター(Marshall Space Flight Center :MSFC)の隕石環境研究部門のBill Cooke氏は言う。「典型的な爆発でも数百ポンドのTNT火薬の爆発に相当するので小型望遠鏡でも簡単に写真を取ることができるのです。」
例として、2008年4月にガウスクレータ近くで発生した衝突のビデオを見せてくれた。

月面発光現象

この時衝突したのは2003EH1彗星の小さな残骸である。毎年1月の初めに、地球と月はこの彗星が残したデブリの中を通過し、四分儀流星雨としてよく知られた流星雨が発生する。地球では、大気中で燃え尽き流星雨として発光するだけだが、大気が無い月では月面に衝突し爆発する。
「私達はNASAが月に再び宇宙飛行士を送ると宣言した後、2005年の後半から観測プログラムをスタートしました。」とチームリーダのMSFCのRob Suggs氏は言う。もしその時宇宙飛行士が落下地点付近を歩いていたらと考えると、「月ではどのくらいの発光現象が起きているのか計測するのは良い考えだとわかるでしょう。」
「もちろん直ぐに、私達は計測を始めました。」
最初の計測は-「私達は決して忘れないでしょう。」と彼は言う-2005年の11月7日で、野球ボールほどの大きさのエンケ彗星から分裂した破片が衝突したときだった。その爆発によって光度7の閃光が発生した。その閃光は肉眼には暗すぎたが彼のチームの10インチの望遠鏡で捕らえるには充分だった。
Cook氏によると、良く質問されるのは、「どのようにして月面で爆発が起きるのか?月には酸素が無いじゃないか?」というものだ。
これらの爆発は酸素または酸化反応を必要としない。流星体はとてつもない運動エネルギー、30,000m/hほどで月面に衝突する。「そのようなスピードの場合、たとえ小石の場合でも直径数フィートのクレータができるほどです。その衝突で月の表面の岩石と砂が溶岩のようになるまで熱せられて—それで閃光が発生するのです。」
四分儀やペルセウス座流星群の場合は、非常に密な流星によるデブリ帯を月が通過し、月の発光現象は1時間に1回程度にも上昇する。衝突は月がそのデブリ帯を通過すると静まるが、ゼロになるわけではない。

隕石衝突地図

「流星群がなくても、閃光は観測されているのです。」とCook氏は言う。
これらの「流星群以外」の衝突は、太陽系内に散らばっている膨大な数の宇宙に自然に存在する物質が原因である。取り残された彗星の塵や古い小惑星の破片が、月に降り注ぐ数は少ないが最終的にはかなりの数にのぼる。地球にも同じように衝突していているため、流星群がきていない時でも、夜空を見上げれば誰でも1時間に1個程度の流星が頭の上を横切るのを見ることができる。1年を通して、それらの偶発的なまたは”散発的”な衝突は、流星雨のようなまとまった衝突の数を越え、比率で言えば2:1程度にもなる。
「これは重要な発見でした。」とSuggs氏は言う。「これは月では隕石が落ちない時は無いということを示しています。」
幸運にも宇宙飛行士には危険は少ないとCook氏は言う。「宇宙飛行士に直接衝突することはほとんどありません。しかし、もし我々が月面のあちらこちらに巨大な構造物を建設し始めたなら、これらの統計結果を考慮し構造物への被害も念頭においておかなければなりません。」
だが2次的な衝突には関心が集まっている。月に隕石が衝突すると、デブリがあらゆる方向に飛び散る。1つの隕石の衝突で、弾丸のような速度を持った数千個の”2次的”な粒子が発生する。これは重要な問題である。隕石が直接衝突する確率はほとんど無いが、2次的に発生した粒子と衝突する確率は非常に高いかもしれないからだ。「直径数ミリ以下の2次的な粒子でも宇宙服を貫通します。」とCook氏は警告している。

2次的な粒子の飛散状況

今は2次的な粒子がどの程度まで飛び散るか誰もわかっていない。この問題を解決するためには、Cook氏、Suggs氏らは模擬月面に人工的な衝突をさせ2次的粒子の広がり方について研究している。この研究はカルフォルニアのマウンテンビューにあるエイムスリサーチセンターの垂直型射出装置で行われている(関連情報→)。
一方、観測体制の方は、彼らのチームの口径10インチ(25cm)の望遠鏡が2本になり、14インチ(36cm)と20インチ(51cm)の望遠鏡がアラバマのマーシャル宇宙センターに設置された。彼らはまたジョージアに14インチの望遠鏡を設置し新たな観測拠点を設立した。多数の望遠鏡によって微量の発光現象の二重、三重のチェックができ、観測の統計学的信頼性が増すことになる。
「月では今この時にも発光現象が発生しているのです。」Suggs氏はいう。実際、この記事を書いている間にも、3回の衝突が特定された。
つまり、タイトルは「月面での103の爆発」に変えなければ。。。
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写真上:2008年4月の月面衝突。これは2005年初頭から始まったMEOチームのサーベイによる100回の衝突記録のうちの86回目に相当する。
写真中:2005年後半から観測された100回の発光地点。
写真下:NASAで行われた隕石の爆発。衝突によって発生した2次的な粒子が広がっていくのがわかる。

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