月面に落としたはさみが消えた?:「月面に立った男」


原題は「The Last Man on the Moon」。
この本は原題通り「月面に最後に立った男」ジーン・サーナン、アポロ最後の月探査、アポロ17号の宇宙飛行士の自伝です。

月面に立った男

基本的に「自伝」ですので、全部で31章あるうち、実際に月面に立っている部分の描写は29章と30章だけ。残りはサーナンの生まれた時からの物語です。つまり本の構成はまさしく「自伝」です。
「自伝」部分によるとサーナンは1934年生まれ。したがって、サーナンは、太平洋戦争、終戦後の米ソの対立、朝鮮戦争、ベトナム戦争と、激動の時代の中で、アポロ計画に代表される宇宙開発へ関わって生きていきます。宇宙開発は、米ソの対立などの当時の社会情勢とは切り離すことはできないので、この「自伝」部分も読み応えがあります。社会情勢のみならず、宇宙飛行士に採用されるためのNASA内部での同僚との競争、訓練中の事故なども、決して嫌な感じではなく淡々と描写されています。
 月に関することでは、アポロ12号のアラン・シェパードが月面でゴルフをし、地球に帰還後「何マイルも飛んだ」といっていたが、、実際は10mほどだったことや、アポロ17号で月に着陸し月面の調査を行っているとき、うっかりはさみを落としたら、あっという間にレゴリスの中に埋もれてしまい、いくらさがしても見つけることができなかったこと、17号で一緒に月面に着陸した地質学者ジャック・シュミットが月面でスキーをしたこと、また彼が月面で「オレンジ色の砂」を発見したことなどの裏話的な興味深い事実が幾つか書かれています。
 
 また、実際に月面探査を行っている部分の描写は、体験談に基づいているため興味深い部分が多いです。例えば、宇宙服に付着した月の砂を落とすためには、「はけ」が非常に効果的だったことや、「はけ」で掃いても、どうしても月の砂が入り込み、例えば、最初は爪の先だけだったが、次第に爪の中まで砂が入り込んだことや、月の砂の匂いが火薬のような匂いがしたこと、また、月面探査はかなりの重労働だったことなどが書かれています。
 
 当時の社会情勢とアメリカの宇宙開発の関係、(それほど強烈な書き方ではないですが)NASA内部の人間模様などに興味がある人、または、29、30章だけしか書かれていませんが、体験談に基づいた実際の月探査に興味がある人は、手元にもっておいて損は無い本だと思います。
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(参考)
月の砂の匂いについて→本サイト内「アポロクロニクル③月面ダストの匂い」
月面スキーについて→本サイト内「月面でのビッグエア~月面フリースタイルスキー」

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