月面テニス


 2005年8月30日付けのScience@NASAに月面でのテニスの記事が出ています。月面でテニスをしたらどうなるか?大気が無いためスピンが効かないとか、月の砂のコートで発生する問題とか書かれています。特に月面ではボールが帯電してしまうので、相手にボールをぶつけると電気ショックを与えられ有効との事。気がつきませんでした。面白いです。
 またスピンに関連してアポロ14号の宇宙飛行士Al Shepardが行った月面ゴルフの話が出ています。この話、管制室から「スライスしてる」というやり取りを残しているため、ボールがスピンするのは大気中だけであり、つまりアポロ計画は嘘だったと主張する人の話によく出てくる話になっています。下の記事には出ていませんが、もう少し状況を詳しく見てみることにしましょう。
まず彼はボールが2個持っていました。1つ目のボールでは、第1打目、ボールの上をたたきすぎて失敗(いわゆるダフッた状態?)。2打目はうまく当たらず 2、3フィート(60~90cm)転がっただけで、3打目にうまく打ち、低い弾道で数十メートル真っ直ぐ飛んだようです。2個目のボールでは、コツをつかんだらしく1打目でうまく打つことができ、これも低い弾道で数十メートル飛んだようです。
 問題の「スライスしている」という会話は1個目のボールの第2打目を打った後にされてますので、管制室がうまく打てなかったことをからかって話しているのではと思うのですが。。。。詳しく知りたい方はこちらに会話記録が掲載されています。


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人は彼をロケットマンと呼ぶ。彼の名はプロテニスプレーヤーのAndy Roddick。サーブの世界記録、時速155マイル(約時速250km)を持っているのだ。対戦相手がどこにボールが行ったか理解する前にボールはもう相手のコートに入っている。サービスエース!彼のグランドストロークもまたロケットのように早い。
しかしここには大きな問題がある。彼のような強烈な力で打たれたボールはベースラインを超えていってしまう。アウト!これだと試合に勝つことは難しい。
それでは彼はどうしているのか?Roddickは種明かしをしてくれた。トップスピンである。ボールを斜めに(ラケットを傾けて)打つことでスピンを生じさせている。トップスピンのよってボールの軌跡が下降する。そして遠くに飛んでいってしまう代わりに相手のコート内に落ちるのだ。
そして今ロケットマンは悩んでいる。「もしUSオープンが月で行われたらどうなるのだろう?トップスピンはうまく働くのだろうか?」(→NASAブレインバイトへのリンク)
その悩みはもっともなことだ。2004年ブッシュ大統領が新宇宙政策を発表し、彼は「人類は宇宙へ向かう」と宣言した。彼はテニスプレーヤだけが例外だとは行っていない。人が宇宙に行くとスポーツも一緒に宇宙に行くはずである。今から数十年後、テニスは宇宙でポピュラーなスポーツになっているかもしれない。
この写真は、宇宙服を着た2人のアスリートが月面に引かれたテニスコートでプレーを開始しようとしているところである。彼らの姿がお互いのフェースプレートに映し出される。頭上には太陽が輝き、漆黒の空には美しい地球が見える。今日の地球は三日月だ。

月面テニスの想像図(Credit: Paula Vargas and Terry Longbottom of NASA/JSC)

プレーヤがボールをトスする。ボールはゆっくり上がってゆっくりと落ちてくる。スマッシュ!その時は音もなく静かである。時速100マイル以上のボールがネットの上を横切っていく。長すぎてアウト。もう一人がサーブ、これもまた長すぎる。またサーブ、長すぎる。グランドストロークも長すぎてアウトだ。
何かがおかしい。そう、月ではトップスピンが働かないのだ。
実際、ボールはスピンしている。でもそのスピンでボールの軌跡が降下していかないのだ。月には大気がない。回転しているボールは大気中を飛ぶ時にしか曲がっていかないのだ。(ボールにかかる重力でもボールの軌跡は降下するが、それだけでは足りない)
物理学者たちはこれをベルヌーイ効果といっている。回転しているボールの片方は反対側より大気圧が高くなる。高い大気圧でボールが押されて、したがって軌跡が下に曲がっていく。スイスの物理学者ダニエル=ベルヌーイはこの興味深い現象を18世紀に発見し、つまり300年以上前にAndy Roddickの破壊的なバワーでのサーブを理論的に可能にしているのだ。
ベルヌーイ効果はスポーツではとても重要である。野球では、投手はその効果を利用してカーブを投げる。テニスと卓球では、その効果を利用してサービスエースを狙える。ゴルフでは、スライスの原因になる。

ベルヌイー効果(画像:NASA)

余談だが、アポロ14号の宇宙飛行士Al Shepardが1971年2月6日月でボールを打ち、最初の地球外ゴルファーになっている。彼のクラブは手作りで、地質調査用器具の持ち手に6番アイアンを取り付けたものだった。「残念なことに、宇宙服が硬く、私は両方の腕でしっかりとクラブを握れなかったが、バンカーショットを試みた。」と Shepardは言う。最初のショットではミッションセンターからは「スライスだな」と、Shepardからは「まっすぐだ!」と反論しているやりとりが記録されている。実際は、2,3フィート転がっただけであった。その後、Shepardは、「何マイルもどこまでも遠く飛ぶ」良いショットを打てるようになった。月では特に、習うより慣れろ、であるようだ。
月面テニスは地球のテニスとはその方法が違ってくるだろう。例えば、月の重力は弱く、地球の1/6しかなく、ロブは6倍の高さまで上がり落ちてくるまでも6倍の時間がかかる。喉が渇いていたなら、ロブが落ちてくるまでに水をのむことが出来るだろう。
地球ではクレーこー津と芝生コートがある。月では砂埃コートになる。表面はプレースタイルにも影響する。クレーでは速度が落ち、逆に芝生では速度が速くなりイレギュラーの可能性が高くなる。砂埃コートではおそらくボールに砂が付着して、速度は少し下がるだろう。
月の砂はまたテニスに新たな変化を生み出す。例えば、月面ダストは非常に乾燥し強力な絶縁体なので、月面上の物体は(乾燥した日にパチパチ音を立てる靴下みたいに)静電気が溜まりやすい。このような物質に何度も何度もたたきつけられるボールは、すぐに帯電したダスト層を集めるだろう。対戦相手を感電させたいって?じゃあ彼に向かってスマッシュ!
さらに、ボールが月面コートで弾んだ時、砂埃を少し引き起こす。回転したボールは対戦相手に向かう砂埃を発生し、意地悪くも彼の視界を奪ってしまうだろう。この場合、トップスピンは、この場合はバックスピンも結局は役に立つだろう。
そして宇宙服のことも忘れてはいけない。地球では、プレーヤはスポーツ用の軽いシャツを着ている。月では全身を加圧された宇宙服で覆っている。アポロ宇宙飛行士たちによると、1/6Gの月面では実際「走る」ことが出来ず、プーさんの森に住むトラのティガーのようにそこらじゅうを「飛び跳ねる」しかなかったという。プレーヤは地面よりも空中で過ごす時間の方が多くなるだろう。(「フットワークだ!」とあなたのテニスコーチが叫ぶかもしれない。フットワーク?月面に足が着かないのにどうやって?古い戦略は月面では通用しないのだ。)
幸運なことに、宇宙服の肘、膝そして肩の繋ぎ目は人の関節より硬くなっている。オーバーヘッドサーブは難しいかもしれない。ごめんAndy!地球で使われている、フォアハンドかアンダーハンドサーブが月では必要になるかもしれない。一方、バックハンドストロークはもう使われなくなっているかもしれない。加圧されている宇宙服では体の反対側に腕を動かすのは難しいだろう。
そのうち月面テニス用の宇宙服が開発されオーバヘッドサーブやバックハンドストローク、そして普通のランニングなどが出来るようになるだろう。コートの大きさも、おそらくベルヌーイの法則がなく重力も小さいため地球より大きなコートに変更されるだろう。
低重力、トップスピンなし。かさばる宇宙服。月面テニスは全く違ったものになる。でもRoddickは言う。「それはそれで面白いじゃないか!」
写真上:月面テニスの想像図(Credit: Paula Vargas and Terry Longbottom of NASA/JSC)
写真下:写真:ベルヌーイ効果(画像:NASA)

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