16トンの月ダスト


1月7日付けSCIENCE@NASAに「16トンの月ダスト」という記事が掲載されています。久々の月のレゴリスに関する記事です。
レゴリスシミュラントを作る話です。何で16トンなのかというと、昔そういう歌があったかららしい。概訳は以下。


・・・シャベルを担いで9号抗へ歩いていった
9号抗から16トンの石炭を運び出した
16トンを運んで、何を手に入れられるのだろう・・・
耳を澄ませば、NASAのプロジェクトマネージャがこの歌を歌っているのが聞こえるかもしれない。最近、マーシャル宇宙飛行センターのCarole McLemoreは岩を砕く大きな杭にこれまた大きなハンマーを振り下ろしているので、Tennessee Ernie Fordが作った有名なこの歌を歌う理由があるのだ。
「私はその岩を“ぶったたけ岩”と呼んでるんです。」とマーシャルのレゴリスシミュラントチームのマネージャMcLemore氏は言う。「他の人達は「その岩は“ぶち壊せ岩”だ」といつも言うのだけど」
ぶったたけ岩かぶち壊せ岩かどうかより、この小柄な女性はその手に大きなハンマーを握って何をしているのだろう。実は、彼女は月ダストを作っているのだ。

写真上:NASA、マーシャル宇宙センターのCarole McLemoreがMontanaのNyeにあるStillwater鉱山で岩を砕いている写真:NASA

「私達はそれを“月レゴリスシミュラント”と呼んでいます。」とMcLemoreは言う。「私達はそれを作るためにちょうど良い岩が必要で、その岩がこのMontanaのNyeにあるStillwater鉱山で手に入るのです。」
マーシャルのチームは、NASAの将来的な月探査をサポートするため、現実的な月ダストの代替品もしくはシミュラントを作るために、アメリカ地質調査所(US Geological Survey:USGS)と共に働いている。チームメンバーは岩を砕いて適度な大きさにし、それをさらに砕いて礫にする。その礫は専用のコンテナに積み込まれて山を降ろされ、18個のタイヤを持つトレーラでデンバーの地質調査所に運ばれる。地質調査所ではその礫をさらに砕き磨り潰してシミュラントをつくり、月ダストにあわせるための特別な“レシピ”に従ってブレンドし鉱物組成を合わせられる。
これはとても手間がかかる作業だが、McLemore女史はその価値があると信じている。「NASAは月で生活し働くために人を送ることを計画しています。そしてそこは宇宙服を初めとして全ての物にまとわりつく月ダストで満たされた世界なのです。」と彼女は説明する。「それは肺まで入ってきます。だから私達は実際の月面でダストがどのように振舞うのか学ぶために、地球上で同じような振る舞いをするシミュラントが必要なのです。それらの実験のために必要な月ダストはアポロサンプルでは全然足りないのです。」
レゴリスシミュラントは月ダストを有効に利用する方法を見つけるための“モルモット”として使われている。良い例がコンクリートである。例えば、エポキシ樹脂とレゴリスを混ぜればとても強固なコンクリートを作ることができ、居住施設や他の構造物を作ることができる。硫黄と月ダストを混ぜて、適切に焼成させても良質のコンクリートができる。他のレシピも研究が進むにつれて見つかることだろう。月や火星では、その場所にある資源が、全てを地球からの供給に頼ることができない宇宙飛行士達には重要になってくるのだ。
レゴリスシミュラントを扱うことは、実際の月ダストから有用な資源や鉱物を抽出する方法を研究者達が思いつく助けになるのだ。

ダストに覆われている月

「例えば、月ダストと月の石の大部分には豊富な酸素が含まれています。」とマーシャルのレゴリスチームの地質学者Christian Schrader氏は言う。「もしその酸素を抽出する方法がわかれば、将来の月面基地で呼吸するための空気の資源として月ダストを使うことができます。また酸素は、月の砂に、おそらく極の氷として含まれる水素と共に、燃料電池での発電に使われ、副産物として飲料水が得られます。酸素と水素はまたロケットの燃料にもなります。」
実際Stillwater鉱山は月研究に重要なシミュラントを作るための材料を生産する場所としては適切な場所である。そこの岩の幾つかは27億年前に形成された岩石なのだ。
「そこの地下には巨大なマグマ溜まりがあります。」とSchrader氏は言う。「マグマは長い時間をかけて冷えて固まり私達が“斜長岩”と言っている薄い層を作ります。Stillwaterの地質は、月の高地の地殻が結晶化して冷えていったのとほぼ同じ過程で形成されているので、シミュラントの原料を集めに行く場所としては適切な場所なのです。」
辛い仕事にも関わらず、科学者たちがこぞって岩山の中腹にあつまりハンマーとつるはしをふるって岩を砕いているのは、ここがレゴリスを作るのに適した岩石があることを約束されている地だからなのだ。
「時々、冷たい北風が私達に吹き付けてきます。」とSchrader氏は言う。「とても厳しい気候です。」
だが全ては科学のため。ほれ、シャベルにもたれて休むんじゃない!
>—–
写真上:NASA、マーシャル宇宙センターのCarole McLemoreがMontanaのNyeにあるStillwater鉱山で岩を砕いている写真:NASA
写真下:ダストに覆われている月。Photo credit: NASA/Apollo 17

You may also like...

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>